ぶん文Bunレビュー(『飼う人』柳美里)
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ミルフィーユさん、今回も充実のレビューをありがとうございます!
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今回お手に取っていただいたのは柳美里さんの『飼う人』。2020年末発表の全米図書賞・翻訳文学部門にてお名前を聞かれたという方も多いのではないでしょうか。
『飼う人』(柳美里)
カテリエのホームページ2021.01.07掲載で新着本として紹介された本書を読んでみた。本当はこの作者の別の本を読みたかったのだけど、残念ながら購入できていないということで…。
4つの物語からなり、1作目と4作目は夫婦それぞれの目線から書かれている。物語が繋がっているので、あのときお互いこういう想いだったのかと知ることが出来て面白い。
飼う生き物にのめり込むのに、一緒に過ごす人間とはコミュニケーションが取れない。もしかしたら、人間と上手くいかないからこそ生き物に執着するのかもしれない。全体的に何となく不穏な雰囲気の本書は、蛾や蛙などペットとしてあまり飼われない動物が出てくるので、はっきり言って飼う人になりたいとは思わなかった。また、表面では見えていない部分で人は何かしら不安や不満を抱えて生きているのだと感じた。
ちなみに他の図書館で調べてみたら、わたしの読みたい『JR上野駅公園口』は保有数3冊、予約数74件だった。今回読み終えて柳美里さんの本をもっと読みたくなったので、早くカテリエにも届いてほしい!
ミルフィーユさん、ありがとうございます。さすが読書家とあって、タイムリーな作品・作家さんはしっかりとチェックしていらっしゃいますね!
ぶん文Bunでは全米図書賞発表後すぐに『JR上野駅公園口』を発注したのですが、入荷したのは今回レビューをいただいた『飼う人』や自選作品集、『南相馬メドレー』などでした。芥川賞・直木賞・本屋大賞などもそうですが、受賞したらすぐに書店さんへ出回ってしまって、図書館にはなかなか入ってこないのですね・・・。
そうした意味で、実は私(クリエイティブ司書)自身は「ベストセラーは自分で買う派」です。芥川賞・直木賞なんかは、すぐに書店さんで買ってしまいます。また漫画も自分で買いますね。というか、何度も読みたい本は全部自分で買ってしまいます。そういう意味では書店さん最高!という気概で生きております。
・・・こう言うと(あるいは逆にベストセラーを買いまくったとしても)「じゃあ図書館は何のためにあるんだ」と言われてしまうんですけれど、私の考えでは「個人では買いづらい本を揃え、個人では気づかない本を提示する」ことが図書館の役目なのだと思います。
たとえば全米図書賞のニュースをみれば『JR上野駅公園口』のことをすぐ知ることになるのですが、柳美里さんの自選作品集にまで手を伸ばすことができる人はそうそういないのではないでしょうか。そこに、読書の世界が広がる可能性を拓いておくことこそが図書館の役目なのです。もちろん、価格が高くて一人一人の読者さんでは手が伸ばしづらい場合も図書館の出番だと思います。柳美里さんの自選作品集は3,000円程度とそれほどでもない値段でしたが、文庫本の価格に比べたらとても高価ですよね。私としては、柳美里さんの小説世界をより克明につかみたい人が現れたときに、その作品集があるのとないのでは大きな違いが生まれると判断し、ぶん文Bunとして購入させていただいたところです。
ちなみに柳美里さんのTwitterもお薦めです。最近はまた東北で大きな地震があり、彼女がその土地に今もお住いであることをひしひしと感じさせるツイートがありました・・・。
正直なところ、ビジネス本や医療本、レシピ本などでも「自分で買ったほうがいい」場合が多いのかもしれません。語学の単語帳や受験勉強の参考書はその最たるもので、自分のマーカーペンを使って汚したり書き込みをしたりして使うべき、自分で購入するべき本というものはあると思います。
・・・とはいえ『JR上野駅公園口』やその他の芥川賞・直木賞なんかは客観的な評価も得た重要な作品ですので、引き続き発注を続けてまいります。取次店さんに頑張っていただくしかないですが(笑)、可能なかぎり早く入荷したいと願っているところです!
ぜひ皆さんも、ぶん文Bunで手に取ったり見かけたりして気にいった本があったら、地元の書店さんで購入してみてくださいね!それが結局、書店さんのチカラになり、出版社さんのチカラになり、作家さんのチカラになることだと思うのです。「図書館はショーウィンドウ」というところでしょうか・・・。
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※※これまでのぶん文Bunレビューを下記ページに格納し、逐次更新しております※※
【ぶん文Bunレビュー投稿記録(2020年9月~)】
https://lib.katerie.jp/index.php/column-hondana/79-reviewstock
※椎葉村図書館「ぶん文Bun」に置いてある本はこちらのページにて検索できます。
(クリエイティブ司書・小宮山剛)