ぶん文Bunレビュー(『ニーベルンゲンの歌』岡﨑忠弘訳)
「ぶん文Bunレビューキャンペーン」に新しいご投稿をいただきました!
今回のレビューは、あの古典の大作・・・。まさかこんなに早く、アイツに関するレビューが届くなんて思いもせず・・・。クリエイティブ司書・小宮山剛は、まだ心の準備ができていませんでした(笑)
\ぶん文Bunレビュー投稿方法/
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※※※どなた様のご投稿も歓迎です※※※
あのドイツ古典のレビューを書いてくださったのは、やはりというべきか「円」さん。実は前回ご投稿いただいた『スコット・カーニー『サバイバルボディー:人類の失われた身体能力を取り戻す』が5冊目のレビューでしたので、ぶん文Bunからコハチローキーホルダーを進展させていただきました!
みなさんもぜひ、コハチローのオリジナルグッズ獲得を目指してレビューをお寄せくださいね。
・・・さて今回お読みいただいた大作は『ニーベルンゲンの歌』です。歴史の授業で習ったという方も多いのではないでしょうか!
それでは、円さんの好レビューをご覧ください↓
『ニーベルンゲンの歌』(岡﨑忠弘訳)
どうやら職員の方たちの間で、「こんなの誰が読むの」みたいなやり取りがあったようですが、さっそく自分が読ませていただきました(笑)。
かなり分厚いので一見すると遠慮してしまう人が多いかもしれませんが、中身は章ごとに短い節でまとまっており、非常に読みやすいです。(各章の最初に要約まで付いているという親切ぶり)ちくま文庫の方も読みやすそうですね。
ニーベルンゲン……話の内容は知らないのにどこかで聞いたことあるなと思っていたら、昔読んだショーペンハウアーの「読書について」でちょろっと比喩として使われていたからだったようです。(本書とは関係ないけどこの「読書について」もおすすめです)
物語はといいますと、おおまかに前半が英雄ジークフリートの活躍を描いたもので、後半は夫であるジークフリートを倒したハゲネに対する妃クリエムヒルトの復讐譚となっています。
物語として壮大で文句なしに面白いのですが、登場人物達があまりにも自分の欲望をぶつけ合う中で予定調和のように話が進んでいくため、人によっては受け付けないのかもなと思いました。結局血で血を洗う戦いをもって終わりを迎えるので読み終えたら結構疲労を感じます。
とはいえ、どうあがいてもキャラクターの運命が決まっている=宿命のもとに進んでいくという物語は、それ故に登場人物の中で葛藤などが生まれ、話に深みが増していく感じも味わえるのでおすすめです。
ほとんど知識ゼロの状態で挑んだドイツ文学の古典だったので、次はゲルマン民族やこの時代の背景なども知った上で再度挑戦してみようと思います。
円さん、ありがとうございます!
はい、たしかに「こんなの誰が読むの」議論はありました(笑)クリエイティブ司書を名乗る小宮山も「さすがに貸出しされるまでには2~3年かかるかもなぁ」と思っていましたが・・・まさか新着棚に置いてあるうちに借りられていくとは、わずか13歳で海外留学へ出かける我が子を見送るかのような気持ちでした。
(今では↑の写真のとおり「文学の海」の棚に収まりました。ドイツ文学拡充中!)
しかもレビューまでいただいて・・・。本当にありがとうございます!
さて『ニーベルンゲンの歌』ですが、ここでショーペンハウアーを引き合いに出しておられるのがさすが円さんだと感激させられます。
ショーペンハウアーと「ニーベルンゲン」は、実は作曲家ワーグナーという登場人物を介したエピソードもあるのだとか・・・。ワーグナーは『ニーベルンゲンの歌』と同じく竜殺しの騎士ジークフリートを題材にしたオペラ『ニーベルングの指輪』を書きました。ショーペンハウアーに耽溺していた彼は、その詩作を自著の献辞つきでショーペンハウアーに贈ったそうです。しかし当のショーペンハウアーはというと、生涯モーツァルトを敬愛し続けていたために自国の大作曲家ワーグナーの作品には見向きもしなかったのだとか・・・。
ちなみに「ニーベルンゲン」と「ニーベルング」はドイツ語の活用の違いなのですが「ニーベルンゲン」には「ニーベルングの」というドイツ語文法上の意味があるため、正しくは『ニーベルングの歌』と訳すべきではないか・・・との声もあるのだそうです。
・・・何と言っても、古典というのはそれだけ時の洗練を経てなお読み継がれるものですから語るべきところは多いですね!それがゆえに、古典から派生する作品や古典にオマージュを捧げる作品(文学、音楽、絵画、アニメ、ゲーム・・・!)も多々あるわけです。
たとえば『崖の上のポニョ』のポニョは「ブリュンヒルデ」とも呼ばれますが、それはほかならぬ『ニーベルンゲンの歌』に出てくるイースラントの女王であり、北欧神話でいうところのワルキューレであり、冥府への旅人であるわけです。それを知ってあのジブリ作品を観るのかどうかは大きな違いですよね。
そんな風に、古典から派生する現代の作品を追ってみるのも面白いと思います。ゲームの世界なんかは、古典や伝説の影響を受けまくりなので特に楽しいですよ!
それではまた、ぶん文Bunで大作が手に取られる日まで・・・。
(ちなみにぶん文Bunレビューは漫画でもCDでも・・・ぶん文Bunにある資料でしたら何についてでも応募可能ですよ!)
・・・・・・・
※※↓その他のレビューもご覧ください↓※※
・ぶん文Bunネーム「ぽよ」さん / 『日本語のために』(池澤夏樹編)
・ぶん文Bunネーム「ななろくに」さん / 『むらさきのスカートの女』(今村夏子)
・ぶん文Bunネーム「ななろくに」さん / 『竜馬がゆく』(司馬遼太郎)
・ぶん文Bunネーム「円」さん / 『歎異抄[まんが学術文庫]』(唯円)
・ぶん文Bunネーム「ろな。」さん / 『記憶喪失になったぼくが見た世界』(坪倉優介)
・ぶん文Bunネーム「円」さん / 『白い牙』(ジャック・ロンドン)
・ぶん文Bunネーム「ななろくに」さん / 『痴人の愛』(谷崎潤一郎)
・ぶん文Bunネーム「円」さん / 『読書の価値』(森博嗣)
・ぶん文Bunネーム「円」さん / 『空の境界』(奈須きのこ)
・ぶん文Bunネーム「ろな。」さん / 『くーねるまるた』(高尾じんぐ)
・ぶん文Bunネーム「ミルフィーユ」さん / 『寝ても覚めても』(柴崎友香)
・ぶん文Bunネーム「ミルフィーユ」さん / 『対岸の彼女』(角田光代)
・ぶん文Bunネーム「ミルフィーユ」さん / 『朝が来る』(辻村深月)
・ぶん文Bunネーム「円」さん / 『サバイバルボディー:人類の失われた身体能力を取り戻す』(スコット・カーニー)
※椎葉村図書館「ぶん文Bun」に置いてある本はこちらのページにて検索できます。
(クリエイティブ司書・小宮山剛)